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要約
自分で自分をケアできるようになる、近年注目を集めているカウンセリング「認知行動療法」。現役でメンタルクリニックに勤務する公認心理師が、現場で患者さんにご説明するときと同じような形で、分かりやすく解説します!こころの健康資産を守るためのセルフケアにも役立ちますので是非ご一読下さい。
いきなりですが、皆さんはこんな経験はありませんか?
✅心がモヤモヤする
✅前向きに行動できない
✅気分の落ち込みや不安が強い
✅確認癖や対人恐怖等が辛い
✅感情のコントロールができない
✅自己肯定感が低い
私は上記のようなお悩みを抱える方々へ、メンタルクリニックや自分で開業しているカウンセリングオフィスで、心理療法の一つである「認知行動療法」を数多く実施してきました。
そして、この記事では、自分で自分をケアできるようになる今注目のカウンセリング「認知行動療法」について、皆さんに知ってもらうため、分かりやすくご紹介していきたいと思います。
皆さんが心理カウンセリングを少しでも身近に感じていただき、「自分の未来とこころの健康資産を自分で守る」ことができるように、専門家としての知識と経験をもとに執筆をしましたので、是非最後までお読み頂ければ嬉しいです🙏
【筆者について】
私は「公認心理師」という心理カウンセラーの国家資格を持っており、精神科・心療内科のクリニックに常勤スタッフとして約10年間勤務、自身のカウンセリングオフィスも開業しているプロのカウンセラーです🥼
職場である医療の現場では、老若男女様々な背景やお悩みを抱える方々のカウンセリングを毎日担当しています。
認知行動療法の学会にも所属しており、専門家として日々学びを深め、カウンセリングの仕事に向き合っています。
【認知行動療法って何?】
まずは認知行動療法とは何かについて知っていきましょう。
認知行動療法という言葉、最近では大分有名になってきました。
認知行動療法は心理カウンセリングの手法のひとつで、簡単に説明すると、
「物事の考え方のクセや行動を変えていくことで問題を解決していくカウンセリング」です。
皆さんがストレスを感じている時やこころの調子が悪い時、疲れている時などには、普段は気にしないことがとっても気になって辛くなったり、とてもネガティブに物事をとらえて悲しくなったりしませんか?
また、昔から同じような場面で自分を苦しくする考え方が出てきて、ぐるぐる考え込んでしまい抜け出せない、といった経験はありませんか?🌀
こんな時、皆さんの頭の中には自分を苦しめる考えを次から次へと生み出す「思考のクセ」があります。
また、その時々で皆さんが当然のことだと思って選択している行動や、意識せずにしている行動が、結果的には自分を苦しくしている、長い目で見ると状況を悪くしている、なんてことも少なくありません。
認知行動療法はこのような「思考のクセや行動」をよく観察して、皆さんがより楽に、健康的に過ごせるように変えていくことで、こころの状態を改善したり、困っている症状を和らげることを目指していくカウンセリングです。🌱
【認知行動療法の良いところ】
認知行動療法には他のカウンセリングと比べても、とても良い点がいくつかあります。
それは大きく次の3つです。
①クライアントが自分で自分をケアできるようになる
②カウンセリングの効果が分かりやすい
③メンタル疾患の予防や再発防止に役立つ
認知行動療法を始める時に、私たちは患者さんに
「習い事のようにやってみましょう」
と声かけをします。🎻
これは認知行動療法のユニークなところですが、カウンセラーは自分たちが使っているカウンセリングの技法や、今カウンセリングで起こっていることの多くをオープンにしてクライアントに伝えて話し合っていきます。
そして自分自身のこころをケアするための技法をクライアントが身に付けて、自分の為に使えるようにサポートします。🤝
最後には、クライアントがセラピストなしでも自走できるようにする。まさに習い事をするようなカウンセリングです。
ここまでオープンなカウンセリングの手法は珍しく、身に付けたこともすぐに自分の為に使えて効果を早く実感できるので、認知行動療法をやっているクライアントが
「わかりやすいカウンセリングですね」💡
と言って下さる理由の一つとなっています。
時には辛いことにも向き合うカウンセリング、続けていく上でも、この「分かりやすさ」はとっても大事なんです。
そして、クライアントの日常生活の中で、ストレスのある状況が発生しても、カウンセリングを通じて身に付けた技術で自分で自分をケアできるようになるので、ストレスを軽減し、メンタル疾患の発生を予防したり、再発を防ぐことも期待できるというわけです。
もちろん、認知行動療法以外の、長い年月で発展して、研究されてきた他のカウンセリングもとても素晴らしいもので、心理療法として非常に効果があることがわかっています。📚️
どのカウンセリングの方法が自分に合っているかは相性もあるのでご注意です。
【認知行動療法の考え方】
先ほどお伝えしたように、認知行動療法ではカウンセラーがクライアントにセルフケアに必要な技術や理論をオープンにして伝えながらカウンセリングを行います。
そのため、私たちカウンセラーはこのような図を最初にクライアントにお見せして、これから一緒に取り組むことの前提を共有します。
認知行動療法の世界では、ストレスのある状況では、個人の中に生まれる「認知」・「行動」・「身体反応」・「気分や感情」が、黄色い矢印で示されているように、それぞれ影響しあって、悪い方向に強め合うことでぐるぐるとして抜け出せない負のスパイラルが生まれると考えます。🌀
個人の中の4つの要素は説明するとこんな風になります。
【認知】・・・頭に浮かんだ考えやイメージ
【行動】・・・外から見てわかる行動やふるまい
【身体反応】・・・体に生じる変化
【気分・感情】・・・自分の中に生じた気分や感情
この負のスパイラルがある状態で起こっていることを、図のようなイメージを使って理解することで、自分自身のことを観察して、どうすれば良い方向に回転させられるのかを見つけ出していきます。💡
悪い方向にぐるぐる回っている負のスパイラルを良い方向に回転させるためには、図の右側の「個人の反応」を変化させることが解決策となります。
カウンセリングではその「個人の反応」の中でも「認知」と「行動」の部分を変化させることで問題を解決していくことを目指すので「認知行動療法」と呼ばれるわけです。🌱
【どんな風に認知行動療法に取り組んでいくのか】
認知行動療法では、さまざまなワークがありますが、基本的に観察した自分のことや考えを書き出すことで沢山の気づきを得ていきます。🖊️
認知行動療法では毎回カウンセラーからクライアントにホームワークを出しして、カウンセリングで学んだことを日常の中で試してもらい、その結果をまた次のセッションで話し合うという流れで進んでいきます。
認知行動療法で行うワークには、
⭕️自分の状態に気付くためのワーク
⭕️認知のゆがみを整えるワーク
⭕️ストレスに対処するためのワーク
⭕️いろいろな行動の変化を起こして気付きを得るワーク
⭕️感情と距離を置くためのワーク
⭕️思い込みが出来上がった過程を知るためのワーク
などがあり、クライアントの解決したい問題の特徴に合わせて、これらを使い分けていきます。
さらに、それぞれのワークをクライアントが自分で場面に応じて選んで使いこなせるようになるまでカウンセラーは寄り添って丁寧にサポートをしていきます。
【認知行動療法を使ったワークの具体例(Aさんの場合)】
色々と解説してきましたが、説明だけではイメージがつきづらいですよね。
そこで、実際にクライアントが認知行動療法の考え方を使ってストレスが生じる場面を見てみるとどうなるか、お見せしたいと思います。
ここではAさんという、対人恐怖がある、架空のクライアントの事例を使って、説明します。
■ストレスとなる場面・状況
今朝、Aさんが出勤して階段を上っているとB部長が階段を下りてきた。Aさんは、「おはようございます」と挨拶したのに、B部長は無言ですれ違って行ってしまった。
こんな場面があったとします。対人恐怖の強いAさんにとっては、もう一大事ですよね。💫
そしてAさんの中には次のような4つの反応が生まれました。
■認知・・・頭に浮かんだ考えやイメージ
「無視されちゃった」
「どうしよう、私嫌われているのかも」
「きっと悪い評価を社内でされているんだ」
「私はこの会社にいらないんだ」
■感情・・・自分の中に生じた気分や感情
不安・悲しみ・恐怖・絶望感
■身体反応・・・体に生じる変化
心臓がバクバクする、涙が出る、体が重くなる
■行動・・・外から見てわかる行動やふるまい
下を向いて階段を上る、他の社員と目を合わせないようにする
この状況のAさんはどんどん不安も高まるし、関係ない人たちまで怖くなるし、みんな自分のことを嫌っているように思えて辛くなっていました。
しかし、こんな負のスパイラルに完全に飲み込まれていたAさんが、自分の中に生まれた反応を認知行動療法のワークを行ってモニタリングしてみると、認知や感情と距離が生まれて、いろいろなことに気づくきっかけとなりました。📝
例えば、認知の部分には「私は本当に嫌われているのかな?」、「部長がすごく急いでいた可能性はないかな?」、「自分の声が小さかった可能性は?」など思考の幅が広がる変化が生まれることもあります。
また、Aさんはこの場面で「下を向いて階段を上る」、「他の社員と目を合わせないようにする」という行動を選択しましたが、これだとすれ違う他の社員も声がかけられなくなり、「無視されている」、「私はこの会社にいらないんだ」といった気持ちが強まってしまいそうですよね。🌀
Aさんはこの無意識に刺激を避ける行動により、自分のネガティブな認知を修正する機会も失っていたのです。
逆に「顔を上げて、次にすれ違う社員の目を見て挨拶をする」という行動を取ったらどうでしょうか。B部長とは違った反応が返ってきたり、その結果によって、これまでと違った良い認知が生まれるかもしれませんよね。🌱
このようにして、認知や行動を検討したり修正したり、行動により実験を行ったりすることでAさんは次に似たような場面があっても上手く対処することができるようになります。
上記のようなプロセスも、カウンセラーは心理学の知識を生かして促進していきます。
そして、こうした健康的な思考や行動の変化を積極的に、意識して起こしていく技法が認知行動療法には沢山あります。
これは一例ですが、カウンセラーは多くの技法を一人一人のクライアントのケースに合わせてカスタマイズし、認知行動療法のワークを提供していきます。
【専門家に指導を受けるのがおすすめ】
ここまでお読みいただくと、
「認知行動療法って自分で出来そう!」
と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに本を買ったり、YouTubeを見て、自分で勉強して取り組むことも今は可能になっています。
しかしこれまで数多くのクライアントと接してきた私個人としては、最初はしっかりと精神科医や公認心理師、臨床心理士などの専門家から指導を受けることもオススメです。🥼
先ほど解説したように、認知行動療法を一つの習い事と捉えると、当然ながらいわゆる「山の案内人」から基礎をしっかりと学んでコツを教えてもらうことはとても重要です。
専門家の目線や知識を借りることで、今まで自分では気づけなかったこころの動きや自分の特徴、心理学に基づいた適切な対処の仕方、努力の方向性を知ることができます。
皆さんが上手くいかなくて落ち込んでしまうことも防ぐことが出来ます。
そして、時には認知行動療法の枠組みを超えて、過去の体験にも焦点を当てる心理療法が必要な場合もありますし、医療が必要な状態になっている場合もいち早く発見できます。💊
気になった方は是非、専門家による認知行動療法を受けてみて頂きたいと思います。
【認知行動療法はどこで受けられる?】
では、認知行動療法はどんなところで受けられるのでしょうか。
今のところ代表的な場所は、
✅️精神科・心療内科の医療機関
✅️カウンセリングオフィス
✅️オンラインカウンセリングサービス
などがあります。
特に最近はオンラインカウンセリングでも使えるようなツールを整えているサービスもありますので、認知行動療法を受けられる場所はどんどん増えています。
医療機関では2010年から保険適用となりましたが、算定要件がとても厳しく、実際にはほとんどの医療機関が自費のカウンセリングという形で認知行動療法を行っているのが現状です。🏥
ご自分のライフスタイルや続けられる条件にあった機関を選んでみてくださいね。
【おわりに】
今回は認知行動療法について、すこし専門的なお話も交えながら解説しました。
認知行動療法をクライアントに実施するカウンセラーである私も、セルフケアのために認知行動療法を自分自身に使っており、その良さを実感している一人です🌱
一度身に着ければ、一生にわたって自分で自分をケアすることができるスキルです。この記事を読まれた皆さんが少しでも認知行動療法に興味を持っていただければ嬉しく思います🙏
今回は触れなかった、マインドフルネスの技法を中心とした新しい世代の認知行動療法「ACT」や不眠症治療に特化した認知行動療法「CBT-i」のことなども含めて、今後も認知行動療法がちょっと身近に感じれらるような発信をしていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。