秋草です!
こんにちわんこそばずるずる(真空ジェシカのラジオ「真空ジェシカのラジオ父ちゃん」より抜粋)
小説書きまーす!
小説「鳴り響かないアラームの時」
優しさなんて要らないなんて要らない。
外の白熱灯のような雪景色は、揺るぎない心を安静に抱き合わせる力がある。
針の無い時計のような私の心の奥。
何も決断出来ず、何も進展せず、只々募る苛々が震わす。
手の衝動に痒みがあり、皮膚をリバーシブルに裏返して表面にシャワーを掛けて濡らしたい。
このまま遠くまで行きたい。
何もせず、立ち尽くす事しかせず、遠くの彼方へ。
緑色が好きだ。
大嫌いな自然界に巣くう木々のざわめきに面くらい、自己嫌悪の魂を嘲笑う緑色が好きだ。
緑色のカラコンを五時間だけした事がある。
買ったは良い物の外に付けて出る勇気は無く、家の中で五時間だけ装着し、そしてほんわかと飽きて目の奥を押すように取り外して捨てた。
ああ、アラームよ、鳴り響け。
私に時を刻ませ、目を醒ませるアラームよ、鳴り響け。
こんな事を考えていたら、あっという間に三ヶ月が経った。
久しぶりに号泣してからの三ヶ月記念日に、残念ながらアラームは鳴りそうも無く、静かに四ヶ月目を待ちそうだ。
そんな時、サンタクロースが窓から見えた。
ん?と思惑が照らされたかのような光がコンコンと輝き、サンタクロースはかなり家の近くまで来たかと思うと右折し、少し黄ばんだ袋が視界から消えた。
私は、その黄ばみ具合が好きだな、と真っ先に思った。
メルヘンの世界の住人も生きている。
それが、その黄ばみから感じ取れた。
私は既にメルヘンの世界に半分足を突っ込んでいる。
それはつまり、自分が生きている感覚がわからなくなり、架空の自分なんじゃないかと、そわそわとしたファンタジーだ。
だからこそ。
サンタクロースの存在よりも、黄ばんだ袋から見える生きている存在感の方が、迫り来るように伝わってきた。
私が生きる為に必要な物はなんだろう。
サンタのように、誰かに愛を届ける事かな。
それとも、もう間違えないように、自分に愛を届ける事かな。
いつものように黙っていられなくなり、私はほんの少し笑ってみた。
ニコッとした顔は自分では見たくなくて、でも、大切な誰かには、見てほしい。
その誰かがいつ来てもいいように。
私はもう一度アラームをセットした。
戻れない未来がやって来るように。
ひっくり返せない過去がやって来るように。
私がまたセットしたアラームは、絶対にまた鳴り響く。
そう確信した日、少しだけ、私の心は進み出した。
これは、サンタクロースからのプレゼントだ。
そして、私から私への、プレゼントだ。