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写メ日記

全133件中11~20件を表示

龍生の投稿

光りと花びらと、輝く物語

11/19 11:51 更新

深い霧の中で見上げた
濃いオレンジが沈む前の空
呼吸より先に
森の奥に置き去りにされた影が揺れる

静かなソファの上
左右に振れる時計の針
握った鼓動が温かくて
胸の上の呼吸を遠ざける

夕日の影が僕を見つめ
小さな針が刺さったまま
戦うことで紛らわせた弱さ
光と影の狭間が曖昧になる

窓の外
落ちていく光の道
沈む街で
希望で膨らんだ風船が
胸の奥で静かに弾ける

攻略ばかり探した夜
影みたいに自分がついて回る
踏み込んだペダルが
かすかに未来を照らす

体の中心に落ちる花びらが
風の中でほどけて
記憶の中の笑い声が
暗闇の端を淡く染める

走れない日も
止まれない日も
過去の自分を抱えたまま
進む鼓動だけが
握った手の中で強くなる

霧の先の音が消える時
傘の下で歩いた記憶が
胸の奥を灯して
まだ見ぬ
海の向こうへ行ける気がした

夜明け前の街を抜けて
重なる影が溶ける
孤独でも輝く物語を
ここから描いていく

6598

コーヒーと回り道と、丸い尻尾

11/17 01:57 更新

いつもより早い朝
淡い空間の中漂う光が
胸の奥で静かにほどけていく

ぬるいコーヒーの煙が
澄み渡って
眠った心をゆっくり起こし
今日の空気を満たしていく

決められた予定のようで
決めていない道の先
円を描く小動物が
気まぐれで回り道をするように
君の気配が
思い出の先に揺れている

遠い街で笑い声が聞こえても
鼓動はそっと重なって
レンガの片隅で響いていく

湖をかすめる風が
ベンチの隙間をすり抜けて
季節が入れ替わるたびに
僕らは少しずつ
新しい景色を吸い込んでいく

忙しさに飲まれた日も
眠さに負けそうな夜も
尻尾を丸めた丸い背中に
頬をうずめて
温かい光に 懐かれる

風に任せて歩いて
ふと立ち止まって
落ち葉が舞うトンネル
靴が鳴らした音の先に
優しい瞳が見つめる

夢みたいな月日が
輪郭を作って
混ざり合って
歯車を回していく

流れ星の軌道は読めなくて
弾いたコインを握りしめ
掌の鼓動を
ポケットにしまう

夜明けが近づいて
クリーム色の世界で
今日の物語が
夢の続きを描いて
そっと歩き出す

6598

壊れた時計と路地裏の花と、雨が描いた道

11/15 00:03 更新

止まった息を 夢が叩いた夜
壁に飾った 壊れた時計が
ゆっくりと動き出して
ネオンのようなオレンジが
瞳に落ちる

未知はいつも暗くて
空想から零れ落ちた先に 転がって
砂の城みたいな夢を抱えて
それでも どこかで笑っている

向かうほどに
落ちていく希望なんて
もう要らない
窓から差し込む光が
静かに 滲んでくる

季節は風と踊りながら
記憶の奥の糸を 編む
思い出せないほど笑えて
妙に 輝いて
泥のような温度で

深く息を出来ないことに
勝つなんて
目を閉じるほどに
大したことじゃなく
息をしていた
それだけで
繋いだ手の温もりを 感じた

暗闇で揺れて
息を吐いて 椅子に座る
失って 取り戻して
水滴が床に 落ちる
舞うほどに
空っぽの器は 分け合えるから

明けて滲む空の下で 歌う
掴んだ現実は 過去と未来の
隙間から差し込む光の中にあって
言葉にならない声で
喉を震わす

窓を伝う文字が 滲んで
思い出が風と 踊り
路地裏の花を 拾い続ける
くだらなくて
綺麗で
幻のようで

雨が描いた道を
砂の音を 噛みしめて
進んでいく

6598

ビー玉と切符と、雨上がりの遺跡

11/13 02:20 更新

目を閉じて 空気が震えれば
そこは楽園になる
ズレたリズムでもいい
息を感じて
それがビートになる

静かになった夜の街を歩く
七色のネオンが揺れて
頬が風を纏う
その温もりで 少しだけ救われる

雨上がりの遺跡の片隅で
反響する言葉が流れていく
完璧な道が霞んで
月の欠片が空から落ちて
手の中で 美しく光る

染められたビー玉を弾いて
感じるままに踊る
回転する円盤の音に
情熱を重ねていく

涙が落ちて 波紋を描くノイズ
零れ落ちて メロディーに変わって
夜を照らす

人生は一度きり
見えない鎧なんて置いて
片道切符の列車に乗る
窓を流れる雨が 物語を描いていく

歩幅を合わせて
気ままに揺れながら
寄り添う空の下
その瞬間を
胸に刻んでいく

6598

蜃気楼とグルーブと、光の粒

11/11 11:46 更新

どうでもいい話で微笑んでいた
昔から側に居たように
何も気にせず 揺られていた夜
言葉が触れ合うだけで
自分が信じられた

音のない街を
風だけが追い越していく
赤いワインの残り香に
響いた声が 溶けていく

暗闇も ぬくもりが連れ去って
別の空をくれるから
何かを置いて
少しずつ
あの日から遠ざかる

電車の窓に映る自分が
知らない誰かみたいで
その横顔を
誇りに思えた

あの時の笑い声は
どこまでも無防備で
今でも目を閉じると
夢の底で揺れている

桜の花びらのように
落ちていく瞬間が
こんなにも美しいと
蜃気楼が物語る

星空を見上げて
あの夜のリズムが
少しでも心を撫でているなら
きっと風は流れていく

時計の針が進んだら
光りの粒の中で踊ろう
繊細なグルーヴの中で
泳ぐように
ただ身を任せて

6598

虚構と理想の果てと、アイアム・シャドウ

11/08 20:33 更新

――子供の頃
遠くの運動公園まで歩いて行った

そこには滑車に紐がついていて
ぶら下がると、十メートルほどの距離を
風に乗るように行ったり来たりできた

その遊具が大好きで
何度も、何度も繰り返した

けれど、体が大きくなるにつれて
重くなった体は端まで届かなくなった

小さかった頃は
体が羽のように軽くて
もっと遠くまで飛べたはずなのに

遊び疲れて、夕方になる頃
夕日が途中で止まった滑車と僕の影を
地面に長く伸ばしていた

――時は流れ
僕は会社のサーバールームにいた

夜明け前の空気が冷たく
眠気と倦怠が身体を包んでいた

上司の命令で部署が変わり
望んでいないメンテナンス作業をしていた

カチカチと鳴る電子音
ディスプレイに流れる数字が
心拍のように脈を打つ

ハードディスクの中で
暗号化されたデータが回転している
本当の姿を隠した影のように

作業の手を止めて
天井を見上げた
蛍光灯が僕の影を映している

僕は試しに照明を消した
無数のハードディスクのLEDが
夜空の星のように瞬きながら
あらゆる方向から僕を照らした

その光の中で
誰かが囁いた気がした

――アイアム……

音ではなく
意識の奥で響く声だった

小さなLEDの光が
僕の輪郭をゆっくりなぞっていく

天井に浮かぶ影が揺れた
小さな光の中で
僕は本当の影を見た気がした

――実は僕は会社員の他に
影のモンスター“シャドウビースト”の討伐を行っていた

シャドウビーストはある日突如として現れた
蔭に潜み、影となって人を襲う魔物だ

その力は日に日に強くなっていた
人の恐れを糧にして
闇の中で姿を変えていく

そんな中で、僕はある日突然
魔力という“理不尽を超える力”を手に入れた

シャドウビーストを倒すたびに
自分の中の魔力が確かに増えていくのを感じた
それはまるでロールプレイングゲームのようで
倒すたびに、自分が理想の影に近づいていくようだった

誰にも理解されなくていい
誰も知らなくていい
ただ、自分の理想の姿を演じることができる
それが“影”だった

ビルの隙間からの光が僕を照らし
地面に長く影を伸ばしていく

止まった滑車が動き出すように
風が、どこからか吹いていた

――その日、僕はシャドウビーストを追っていた
街を駆け抜け、路地裏へと足を踏み入れる

そこには、討伐仲間のゼノが立っていた
様子がおかしい、と思った瞬間
ゼノが刃を抜き、僕に切りかかってきた

そのスピードは、人のものではなかった

「影が俺に力を与えた」
「この世界を滅ぼす」

低い声が、まるで影そのものから響いていた

どうやら彼は、影の力を吸収していくうちに
影そのものに取り込まれてしまったようだった

ゼノの瞳が黒く濁る
「この薬を飲めば、俺は最強になれる」
震える手でビンを握り、カプセルを飲み込む

その瞬間、空気が裂けた
ゼノの身体が膨れ上がり、骨が軋む音が響く
皮膚が光を拒むように黒く変質していく

モンスターへと変わり果てたゼノのエネルギーは
何十倍にも膨れ上がっていた

僕の目の前には、もはや仲間ではない存在がいた

それは“自分の理想”ではなく
“影の理想”に支配された虚構のモンスターだった

――ゼノが咆哮した
その瞬間、鋭い爪が僕に襲いかかる
咄嗟に身をかわすと、爪の衝撃波が背後のビルを吹き飛ばした

「どうだ、この素晴らしき力」
ゼノが笑う声が闇に響いた

僕は息を整え、最大の爆発魔法――エクスプロージョンを唱える
魔力が腕を走り、空気が震えた
次の瞬間、周囲十メートルが衝撃波に包まれた

爆音が夜を裂き、粉塵が街を覆う
「やったか」
そう呟いた僕の前に、ゼノが立っていた

かすり傷ひとつない
その目はすでに人間ではなかった

ゼノが再び咆哮する
街の隙間から無数の影が溢れ出し
黒い霧となって彼の体に吸い込まれていく

巨大なモンスターへと変貌したゼノのエネルギーが
街全体を押し潰すほどの圧を放つ

息をするだけで痛い
魔力が枯れかけた指先が震える
絶体絶命――そう思ったその時

――アイアム……

声がした
誰のものでもない
けれど確かに、僕の中から響いていた

視界の奥に、あの日の滑車と夕焼けが浮かぶ
風に乗って、自由に飛べたあの感覚が
胸の奥でふたたび動き出す

僕の内側の影が震え
鎧のようにまとっていた恐れが剥がれ落ちていく

体が軽くなる
地面の感触が遠ざかる
空気が逆流し、世界が静止する

音も匂いも消えたその中心で
ただ“影”だけが、確かな質量を持って存在していた

その瞬間、
僕の中で、究極のパワーが目覚めたようだった

――空気が止まった
息をすれば、世界が震えていた

その時、聞こえた
――アイアム・シャドウ

それは誰かの声ではなく
僕の内側に、ずっと潜んでいた声だった

無数のハードディスクの回転音が
街中に響き渡り、共鳴し、重なり合っていく

音が最高潮に達した瞬間、世界が暗転した
闇の奥で、一筋の光が僕を射抜いた

外側の影が剥がれ
僕の身体は、原子のように軽くなっていく

そして――空間の頂点まで、突き抜けた
視界のすべてが裏返り
上下も時間も消えていく

その高みから
滑車が現れた

僕はそれに掴まり、
世界の中心へと一気に滑り落ちた

衝撃の瞬間
街全体が究極の爆発に包まれる

それは破壊ではなかった
星が生まれて宇宙に解き放たれるような
根源的な解放の閃光だった

ゼノの身体は一瞬にして霧と化し
崩れた街の中で、僕は静かに立っていた

地面には、長く伸びた僕の影があった
だが、それはもう“虚構”の影ではなかった

静かな風が吹く
新しい世界が、音もなく再起動していく

――世界は静かだった
崩れた街の隙間から、朝日が差し込んでいた

僕は立っていた
誰の命令も、誰の影響もない場所で
ただ、自分の呼吸だけが現実だった

地面に落ちた影は、もう僕の形をしていなかった
遠く、別の世界へ伸びているように見えた

――アイアム・シャドウ
その言葉が風に溶ける

力とは、壊すことじゃない
自分を閉じ込めていた虚構を
解き放つことだった

風が吹く
あの日の滑車が軋む音がした

夕日と風と記憶が、胸の奥で重なる
僕は空を見上げた
そこには、もう境界がなかった

6598

桜色と深海と、こぼれる光

11/06 00:34 更新

やさしいメロディーを
耳の奥で撫でている

深呼吸して
胸に届くほどの
手の中に残るぬくもりと
あと何度すれ違えるだろう

時計の鼓動でこぼれた音が
静かに液漏れして
感情の答えを探している

月の光に照らされる影が
夜の波を手のひらに受けとめる
透明になったグラスの底で
過ぎた季節の音が
静かに流れていく

ぬるい人生を踊って
真っすぐな空を飛ぶ
鳥の羽が運んできた夢の断片を
拾い集めている

桜色に冷たい青が混ざるように
思い出と現実の狭間で
落ちてきた花びらが
指を絡めて眠る

ノイズの中で叩くやさしい音色を
胸に押し当てるように聴いている
汚れた毛布を洗うように
自分を抱きしめる夜がある

ひとりに溺れる海を渡って
まだ正体不明の人生のままで
カーテンの隙間の光に触れた瞬間
僕はまた
深海の静けさで息をしていた

6598

ゆれと鼓動と、残りの1ページ

11/04 01:17 更新

いつもの道を歩いていると
心がゆれる時がある

誰かの一言が
時間をトリップして
ビートの中で泳いだ記憶に触れた時

踏切の信号で消えていく
あの日の風の匂いで
ふいに季節の終わりを感じた時

残りの人生の1ページをめくって
優しさに触れた瞬間
もう一度、生きたいと思うことがある

ダンボールが重なる静かな部屋で
響く音で震える夜
それでも
そのゆれを抱きしめて

土砂降りの雨の中 真っ直ぐに
ゆれる心が
世界をやさしく撫でる

雲の隙間から流れる音
僕はただ
そのリズムに身を任せるだけ
感じるままに
地面からの響きを
体で受け止めるように

ノイズさえも味方につけて
素直にゆれればいい
眠りの森でソファに倒れても
夢の中で薔薇を咲かすから

鼓動のようにゆれる想いを
音に変えて
息のようにやわらかく
あなたの中で
火をともす

6598

反逆と左目と、押し入れの秘密基地

11/02 01:36 更新

――子供の頃、押し入れの中にダンボールを置いた
そこで僕は、秘密基地を作っていた

その狭い箱の中から覗く世界が、なぜか好きだった
光と影のあいだに身を潜めて
テレビの向こうの世界を見ていた

誰かが笑い、誰かが泣いていた
けれど僕は、その中に入ることはできなかった

暗闇と光の狭間にある景色は、静かで美しかった
まるで僕が存在しない世界で
物語だけが動いているようだった

それでも、心の奥で願っていた
いつか自分も、あの世界の中で
物語を動かす側に立ちたいと

――時は流れ、僕は早朝のモノレールに揺られていた
海の上を滑るように走る電車の窓に、疲れた顔が映る

名刺には「役職者」と書かれているのに
その肩書は、鎧というよりも鎖に近かった

敗戦した兵士のように、責任だけを背負い
誰かの成果を支えるための歯車になっていた

早朝の誰もいない事務所で作業着に着替え
広い館内を巡回しては、誰にも見えない戦いを終わらせていく

眠い目をこすりながら
フードコートの片隅で、無理難題を整えた資料を作る

正しいことを言うほど、自由を奪われていくこの世界で
僕の中の沈黙が、静かに自由を求め始めていた

やがて気づく
この静かな日常こそが
僕の反逆を育てていたことを

――僕は「エリア11」と呼ばれる場所にいた
そこでは、人は名前を失い
番号で呼ばれ、監視されて生きていた

十一番目に占領された地
軍事勢力「Reign(レイン)」の旗が
空を切り裂くように翻っていた

自由という言葉はもう、誰も口にしない
けれど、僕の中だけで
その響きが静かに息をしていた

そんなある夜
夢の中に、一人の女性が現れた
白い髪が風に流れ
永遠の命を持つ彼女は
瞳の奥に、時間の流れを閉じ込めていた

彼女は言った
「この世界を変えたいなら――
 立ち入り禁止区域へ行きなさい」

目が覚めても、その声が離れなかった
夜が明け、街が光を取り戻す頃
僕はひとり、決めていた

もう一度、空を見上げよう
誰の命令でもなく、自分の意志で

――今日がその日だった
立ち入り禁止区域へ向かう
前日から装備は整えてある
Reign(レイン)は僕の動きを
すでに察知しているかもしれない

もう、家に戻ることはないだろう

夜になった
空には満月が浮かび、雲がゆっくりと流れている
街の外れ、かつての研究施設跡に立つ廃墟へと足を向けた

崩れた壁の奥に、遺跡のような建物が見えた
「あそこに何かがある」
僕は小さく呟いた

スコープを装着し、身を低くしてフェンスを越える
視界に映るセンサーの光
蜘蛛の糸のように張り巡らされた罠
一度でも触れたら、終わりだ

息を潜め、影と影の間を縫うように進んだ
冷たい風の中で、鼓動の音だけがやけに大きく響く

奥へ進むと、広い空間に出た
そこには、巨大な球体の機械がひとつ
鋼鉄の殻に覆われ、表面には「DANGER」の文字
そして、ひとつの開放ボタン

中には毒ガスが入っているかもしれない
けれど、もう迷いはなかった

――僕はボタンを押した

装置が低く唸り、振動が走る
球体に亀裂が生じ、液体が流れ出した
その中から、ひとりの女性が現れる

夢で見た、あの白い髪の女性
眠るように、静かに漂っている

近づいた瞬間、心の中に声が響いた

「私は契約を果たせる者を探している」
「この永遠の呪いを、解き放って」

彼女のまぶたがゆっくりと開く
その左目が淡く光り、
次の瞬間、僕の意識に彼女の声が流れ込んできた

視界が白く染まり、世界が止まる
悲鳴、祈り、怒り、願い
無数の意識が渦を巻き、僕の中に流れ込む

気づくと、彼女の姿は消えていた
代わりに、僕の左目が疼いていた
壁が僕の視線に呼応して、赤く光っている

「自由を取り戻すための反逆」
「その力で、大切なものを取り戻して」

天井から響く声
光が消えたあと、残ったのは
胸の奥で脈打つ、見知らぬ力の気配だけだった

――その時、外から装甲車が走ってくる音がした
入口の扉の隙間から外を見る
夜が明けて、光が差し込んでくる
押し入れの秘密基地から外を見るような錯覚に陥った

Reignの部隊が、廃墟を包囲していた
彼らの視線が、僕を正確に捉えているのがわかった
装甲車から兵士たちが降りてくる
銃口が一斉に僕に向けられる

心臓が高鳴り、左目が熱を帯びて光った
光が鳥のように、兵士たちへ向かって飛んでいく
兵士たちの動きが止まり、
僕の意識と彼らの意識が重なった

この力は、人を絶対服従させる力だった
兵士たちは今、僕の思い通りに動く

僕は命令のように、言葉を放った
「ショックガンで……撃ち合え」

兵士たちは互いに銃を向け、
引き金の音が、冷たい空気を切り裂く
叫びもなく、気絶して崩れ落ちていく兵士たち

頭をよぎった
この力を使えば、僕は押し入れの秘密基地から飛び出して
物語の主人公になれる

ふと手を見ると、血ではなく赤い光が揺れていた
この力は、自由のためのものなのか
それとも、破壊のためのものなのか

左目の赤い鳥が、行先を探していた

――その時、廃墟の建物に警報が鳴り響いた
轟音がしたかと思うと、倒れた兵士たちの向こうに
Reignの特殊部隊が、何十人も並んでいた

強力な兵器が僕に向けられる
僕は左目から、赤い鳥を兵士たちに向けて放った
兵士たちは撃ち合い、次々と倒れていく

視界が赤に染まり、世界が歪んで見えた
僕の目は、暗闇の奥を見つめていた
彼らの記憶、恐怖が光となって
僕の意識に流れ込んでくる

意識と意識が混ざり、境界が崩れていく
いくつもの光が混ざり合い、やがて透明になった

「……ゼロ」
「あなたは無色透明のゼロよ」

あの女性の声が、心の中で響いた
無色透明になった僕は
自分に番号がないことに気づいた

「僕はゼロだ」

兵士に向けていた赤い光を
僕は、自分に向けて放った

赤い鳥が具現化し
僕を背中に乗せ、大空へと連れていく

「エリア11」が、遠く下に小さく見えた
「与えられた運命」「生まれた立場」「人としての限界」
すべてに抗うために
僕は、左目の光を他人ではなく
自分に向けた

自分で自分の意味を決めること
それが、僕にとっての呪いを解くための「反逆」だった

――彼女から受け取った「反逆」の力は、
闇にも、光にもなった

世界は決して綺麗じゃない
それでも、誰かを想い
抗い、選び続ける人間の姿は、美しい

選び続けた意志の光が重なり合い
無色透明の、名もなきゼロとなって
世界をわずかに動かした

押し入れの中で願った、“物語を動かす側”に
僕は今、現実の中で、静かに立っている

――この胸の奥で、まだ赤い鳥が羽ばたいている

6598

タイタンと震える風と、忘れられた光の遺跡

10/30 23:38 更新

シャワーの雫に錆びついた
開かない窓の向こうで
置き去りの名も知らぬ花が揺れていた
あの頃と同じ風が
同じリズムで
まだここに吹いていた

行先の決まったレールに乗って
冷たい星に映る顔
擦り切れた透明なケースの隅に
空から零れ落ちた
夢の切符をしまい込んだまま

歩いてきた足跡は知っていた
自由の鐘の残響が消えたのは
タイタンが遮る光の向こうに
旅立つことを怖れた
自分の影があったことを

泣いてもいい
笑ってもいい
不完全なままで
集めた風に身を委ねればいい

太陽がまた頭上で動き出し
影が足元へと吸い込まれていく
あの温もりが心の中に溶けていく

暗闇の湖に潜って
君の中の光を探す
誰かのためじゃなくて
ただ、自分のために

愛すべき不完全な君へ
忘れられた光の遺跡からのメッセージ
震える風の中で夢が呼吸して
僕は遊ぶように息をする

6598

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